2011年5月22日日曜日

次回の読書会は5月27日(金曜日)です

 会員の皆さん、5月19日の読書会(テキストは大塚久雄『社会科学における人間』)ではお疲れ様でした。活発な議論ができたかと思います。

 「もう終った」とされる「大塚史学」ですが、取り上げたテキストは、マルクスやマックス・ウェーバーへの橋渡し役としては適格だったと思います。

 特に、マルクスの『資本論』第一巻第一章第四節「商品のフェティシュ的性格とその秘密」や『ドイツ・イデオロギー』などの、後期マルクスの真髄とされる「物象化論」を理解するうえで、テキストでの大塚久雄の解説はいまだに有用ではないでしょうか。

 しかしそれでも、今回の読書会で、このテキストにはいくつかの弱点があることが明らかになったのではないでしょうか。たとえば、人間社会を自然科学と同様に科学的に分析するための道具としての「(ロビンソン的)人間類型」と、大塚が理想とする近代市民社会を実質的支えるうえでの規範となる行動様式としての「(ロビンソン的)人間類型」という、ふたつの「人間類型」が未分離に混在している点などです。当日の現社研の学習会でも議論になりましたが、ロビンソン的人間類型を体現していると大塚が称揚する独立自営農民(ヨーマン)のあり様の記述を超えて、「隠忍自重」「質実剛健」などを説く、一昔前に説かれた“道徳”の再現という側面が前面に出てしまっているように思えます(少なくとも、そのような読後感を持ちます)。

 ところで、「ロビンソン的人間類型」に対置される「冒険商人的人間類型」が、前々回の読書会で取り上げた堤未果『貧困大陸アメリカ』で描かれている、現代アメリカ社会を支えるエートスとなっているような印象を持ち、興味深く読みました。わたしは、「暴走型市場原理主義」(堤未果)への対抗原理として、「大塚史学」を再評価してもいいのではないかと、急に色気づいたりもしましたが(笑)。

 閑話休題。

 このようにテキストはいくつかの弱点を含んでいます。ただ、参加者の皆さんには、マルクスやマックス・ウェーバーなどの古典への“道案内役”として、テキストを活用していただければ、今回の読書会は成功だとまずは言えるのではないでしょうか。さらに、なかなか把握しにくい社会科学の原理を話し言葉で平易に説くテキストは、初学者にとっても、ある程度社会科学を齧った方にも、思想の「交通整理」をするうえでも貴重なものではないでしょうか。このように、このテキストを取り上げる意味はあったと、わたしは考えます。

 さて、次回も引き続き読書会をおこないます。テキストは前回と同様に、大塚久雄著『社会科学における人間』です。今回はその後半部分を取り扱います。Ⅲの「ウェーバーの社会学における人間」とⅣの「展望」と「あとがき」です。社会学の泰斗であるマックス・ウェーバーを取り扱います。詳細は下記のとおりです。

 ウェーバーに興味があるけれども独習するには自信のない方や、すでにウェーバーに触れているがさらに自分の視野を広げたいという方など、大歓迎です。よろしくお願いいたします。

●日時;5月27日(金曜日)18時00分~20時30分
●場所;現社研の部室(キャンパスプラザB312 〔B棟 3階〕)
●テキスト
『社会科学における人間』(岩波新書〔黄版11〕 大塚久雄著 800円+税)
●取扱う範囲:Ⅲ・Ⅳ・あとがき(111ページから最後まで)
●参加費:無料(ただし、テキストは図書館か書店にてご自分で入手してください)

新入生の方や、初めてこのブログを読んで関心を持った方など、ご自由に参加ください(なお、二~四年生や大学院生、留学生も大歓迎です)。

【文責:飯島】