2014年12月13日土曜日

次回の映画鑑賞会は12月17日(水曜日)です


次回のTOSMOSの活動は映画鑑賞会となります。以下の通りですので、よろしくお願いします。

次回の映画鑑賞会

日時:1217(水曜日)18:30

場所:キャンパスプラザB312(部室)

※なお、部室(キャンパスプラザB棟)へのアクセスについては、下記のリンク先の地図を参考にしてください。
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_43_j.html
事前の申し込みは必要ありません。直接、会場(部室)までお越しください。

鑑賞する映画
『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』

・監督=チャールズ・ファーガソ
・時間=109分(2010年・アメリカ)

作品の紹介
83回アカデミー賞でドキュメンタリー長編賞を受賞した、2008年に起きた世界的経済危機の裏側に迫るドキュメンタリー。20兆ドルもの大金が消え、世界レベルの経済大暴落を引き起こした原因を金融業界関係者や政治家、ジャーナリストらへの取材を基に検証していく。本作のナレーションを担当するのは、『ボーン』シリーズのマット・デイモン。アメリカやアイスランド、フランスや中国にまで及んだ取材によって明らかになる衝撃の実態に言葉を失う。 (「シネマトゥデイ」のウェブサイトより)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 TOSMOSは、現代社会の様々な問題について、その本質を究明し、解決の道筋を考える東京大学の学術文化系サークルです。
 国際情勢、国内情勢、政治、経済、科学、生命倫理など、さまざまなテーマに関して、学習会、読書会、合宿などを通じて理解を深める研究活動をしています。もし多少でも興味がありましたら、一度わたしたちの活動を見学してみませんか?TOSMOSでは現代社会について一緒に研究する新入会員を募集しています。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 さて、12月9日開催のTOSMOSの学習会に参加の皆様、お疲れ様でした。

 また、報告者の方、詳細な報告、ありがとうございました。テーマは「一票の格差について」でしたが、皆様、いかがだったでしょうか。

 以下、当日の報告について簡単なまとめを試みます。

 当日の報告では、まず「選挙権の平等」が日本国憲法第14条(法の下の平等)と44条(選挙権と被選挙権における差別の禁止)によって保障されていることを確認しました。さらに、「選挙権の平等」の具体的内容として、「投票の数的平等」と「投票価値の平等」に触れました。「一人一票」を主内容とする「投票の数的平等」が戦前から認められていたのに対して、「投票価値の平等」(投票が選挙の結果に対して持つ影響力〔投票の重み〕の平等)は、1964年判決では「憲法上の要請ではない」とされていましたが、1976年判決では一転認められることとなりました。これにより、「一票の格差」(議員定数不均衡)の重要性がさらにクローズアップされることとなりました。つまり、一票の重みに格差が生じると、「投票価値の平等」の原則に反することから、憲法違反なのではないかという点が焦点化されることとなりました。

 格差の許容範囲をめぐる見解をみると、「1対3」未満なら許容されるという見解、「1対2」未満なら許容されるという見解、そして現在有力説となっている、可能な限り「1対1」に近づけるべきとする見解があります。

 さらに、マスコミ等でしばしば報じられる「一票の格差」をめぐる訴訟について詳細に検討しました。すなわち、「合憲」「違憲状態」「違憲・有効」「違憲・無効」の区別についてです。このなかで、報告ではとくに「違憲状態」と「違憲・無効」の違いについて深く掘り下げました。

 「違憲状態」とは、1票の格差が、「投票価値の平等」を損なう程度の状態(違憲状態)に至っているとしつつも、ただちに違憲というわけではない(憲法に反しない)とする判断で、この場合、その選挙も有効とされます。ただちに違憲とならない理由として、最高歳はいわゆる「合理的期間論」を根拠としていますが、どれくらの期間が「合理的」なのかが不明であるという問題点があります。

 一方、「違憲・有効」とは、「合理的期間論」を経過しており「違憲」としつつも、その場合でもなお、選挙は有効であるとします。なぜ有効なのでしょうか。その根拠を「事情判決の法理」という論理に求めます。すなわち、行政事件訴訟法31条と公職選挙法219条前段を参照しながら、最高裁判所は、「高次の法的見地から」、行政事件訴訟法31条の基礎(背景)にある「法の基本原則」を適用するとして選挙を有効としています。このような手法に対しては、違憲の既成事実を追認するものである、とする強い批判があることを付け加えます。

 最後に、「違憲・無効」を一瞥すると、これは文字通り、憲法に反しており、選挙は無効であるとする判断で、その選挙は無効となり、やり直すこととなります。最高裁がこの判決を下した例はありませんが、高裁レベルでは下した事例があり、最高裁の裁判官の中にも「違憲・無効」の判断を示す裁判官も存在しています。

 以上、「一票の格差」についての裁判所の判決の動向を見てみました。さらに当日の学習会では、格差の現状と解決の方向性をめぐって、議論をおこないました。具体的には、各政党の主張について、諸外国の選挙制度について、「一票の格差」の問題解決の方向性などについて議論となりました。

 わたし自身としては、マスコミなどでしばしば報じられる、裁判所が下す「違憲状態」と「違憲(有効)」の違いについて知らなかったので、今後の新聞の見方が変わるのではないかと思います。今年(2014年)1127日には、最高裁が昨年(2013年)参議院選挙に対して「違憲状態」との判断が示されました(裁判官の一人が「無効」との判断)。一方で衆議院では「2倍強」のまま、今回(12月)の選挙へと突入してしまいました。これを機会に、憲法で保障された「選挙権の平等」(憲法14条と44条)について、その重要性についてあらためて認識を深めたいと思います。

 【文責:飯島】