2014年12月23日火曜日

次回の学習会は1月7日(水曜日)です


次回のTOSMOSの活動は読書会となります。以下の通りですので、よろしくお願いします。

日時:2015年1月7(水曜日)18:30

場所:キャンパスプラザB312(部室)

※なお、部室(キャンパスプラザB棟)へのアクセスについては、下記のリンク先の地図を参考にしてください。


事前の申し込みは必要ありません。直接、会場(部室)までお越しください。

テキスト:ルソー著『社会契約論』(1762年)

テキストについては、図書館で借りるか購入するなどして、各自でテキストを入手の上、できれば指定範囲(下記)を読んできて下さい。

テキストは、岩波文庫版(桑原武夫・前川貞次郎訳)、光文社古典新訳文庫版(中山元訳)などが出版されていますが、各自で用意するテキストは、どのテキストでも構いません。

報告者:TOSMOS会員

1月7日(水曜日)に扱う範囲:第1編と第2編

ルソー著『社会契約論』を扱う趣旨について

 『社会契約論』で描かれる人間観や文明観にはハッとさせられることが多い。たとえば、「人間は自由なものとして生まれた、しかもいたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思っているようなものも、実はその人々以上にドレイなのだ。」(第一編第一章)や、「(代議制のある)イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民はドレイとなり、無に帰してしまう。」(第三編第十五章)など挙げればキリがない。そんな社会変革の着想の“宝庫”でもある『社会契約論』。しかし、学校の社会科の授業で必ず登場する文献であるにもかかわらず、その内容をじっくり読み込む機会はそうは多くないのではないか。同時に、あまりに有名なゆえに、かえって誤解にさらされる文献でもあるのではないか。

 その誤解はあながち無根拠だとも言えなさそうである。たとえば、フランス革命に決定的な影響を与えたとされるルソーの思想が、そうであるがゆえにかえって敬遠されることにもつながったのではないか。たしかに、フランスの人権宣言では、「法律は一般意志の表明である」(第六条)と、高らかにうたいあげていることからも、その影響力の深さを伺うことができる。しかし同時に、それが、革命の進展に伴って登場したロベスピエールの独裁恐怖政治の素地をルソーに求める見解も出てくる理由ともなった。はたして、ロベスピエールによってルソーは「悪用」されたのか?それとも、ロベスピエールはルソーの「忠実なる下僕」だったのか?それとも…。

 そもそも、ルソーが求めてやまない“理想の共和国”とは何であるのか? 真の意味で、主権者と人民の利害が同一の国家、すなわち人民主権の国家とはいかなるものなのか? 『社会契約論』のキータームである“一般意志”とは何か? 一般意志はいかに形成されるのか? 「一般意志はつねに正しい」とはいかなる意味においてなのか? 「すべての市民が純粋に自己の利益を追求することをやめて、公的な利益のもとに自己の利益が体現されるように望む」とは、いかなる事態を指しているのか? 「政治体の成員は全体の利益を考えるべきであり、自分の個別の利益を超越する必要がある」と理解してよいものだろうか? ルソーの政治思想への疑問は尽きないのである。

 『社会契約論』は、21世紀に暮らす私たちの社会のありように決定的な影響を与えたとされているのに、私たちはルソーの政治思想を20世紀の“全体主義”などに結びつけ、あえて避けて通り過ぎてしまってはいないか。社会の最低限度のルールを考察した『社会契約論』を読むことで、いま一度、ルソーは何を語り、何を求めていたのか、をじっくりと検討することは無意味な作業ではないであろう。
 
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 TOSMOSは、現代社会の様々な問題について、その本質を究明し、解決の道筋を考える東京大学の学術文化系サークルです。
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【文責:飯島】