2009年11月1日日曜日

2009年10月30日の学習会の報告

 「憲法改正国民投票法」が来年5月18日から施行される。このことを踏まえて、ブックレット『国民投票法=改憲手続法案の「カラクリ」』(自由法曹団編)をテキストにして、学習会を行った。

 発表者のレジュメはコンパクトにまとまっており、資料なども豊富で、前回と同様に活発な議論が展開された。そのすべてをここで述べるだけの余裕はない。

 そこで、「国民投票法」(「改憲手続法案」の問題点のみに焦点を当てたい。現行の「国民投票法」は、安倍晋三内閣の2007年5月14日に、それまで水面下(あるいは国会審議)でおこなわれていた、与党と民主党との修正協議を与党が文字通り振り切り、強行採決したものである。採用したテキストを使って
、この法案の「カラクリ」を見定めたい。
 
 第一に、「投票総数」の「過半数」の意味について問題がある。与党案に従えば、次のとおりとなる。投票率40%の場合(うち白票・無効票10%)、有権者総数×0.4(投票率)×0.9(有効投票率)×0.5(過半数)=0.18で、有権者の18%の賛成票で改憲可能となる。投票率60%の場合(うち白票・無効票10%)、有権者総数×0.6(投票率)×0.9(有効投票率)×0.5(過半数)=0.27で、有権者の27%の賛成票で改憲可能となる。つまり、国民全体からみれば「少数の賛成で改憲」が可能となる。

 強行採決された与党案(自民党+公明党案 以下「与党案」)では、「投票総数」とは「賛成票+反対票」とするとしているが、これは有効投票数の「言葉の言い換え」で明らかな詭弁である。しかも、最低投票率は「一致して拒否」し、「少数の賛成で改憲」の危険は変わらない。多数の意思でのみ改正ができる硬性憲法の意味を没却している。

 第二に、「地位利用による国民投票運動の制限」と「公務員の政治的行為の禁止」である。与党案では、当初明記されていた「政治的行為の制限削除」を「制限あり」に復活した。組合活動を含む組織的行為への規制を引出す危険が大。「地位利用」の罰則は確かになくなったが、禁止規定は生きているから行政処分の対象とはなり得る。「行政処分」とは、具体的には懲戒解雇などである。それだけに威嚇的効果は大と考えられる。

 第三に、「政党等による放送、新聞広告」については「広報協議会」(各議院の議員から委員を10名ずつ選任)が設置されるとするが、その構成員が問題となる。確かに、「会派(政党)比例」から「賛否平等」に変更されたが、政党以外の団体には直接は認めていない。政党の広告が「広報協議会」を行う広報に組み込まれ、全体が「改憲案を啓蒙宣伝する改憲キャンペーン」とされる危険は否定できない。

 第四に、「国民投票運動のための広告放送」では、当初の与党案では投票日の「7日前」から投票日まで、テレビ・ラジオによる広告放送の禁止とされていたが、「14日間」に変更された。しかし、「カネで憲法を動かす」危険性には変わりはない。

 学習会では、この法案のその他の問題点についても議論となったが、紙幅の関係で述べない。
 
 現状では「国民投票法」を強行採決で成立させた安倍内閣は退陣し、さらに、政権交代が起きている。「憲法改正」の動きは遠のいていると考える方もいるだろう。だが、来年の5月18日には「与党案」が施行される現実は変わらない。引き続き、「憲法改正」の動向を追究していきたいと考える。

(文責:飯島)