2012年6月17日日曜日

次回の読書会は6月20日(水曜日)です

 
  東大現代社会研究会(現社研)の皆さん、6月13日の読書会はお疲れ様でした。テキストはカール・マルクスの『賃銀・価格および利潤』でしたが、いかがだったでしょうか。当日は、他大学から二人の方が見学として飛び入り参加してくれました。そのため、一段と熱気のこもった読書会を行うことができたと思います。ご参加いただき、ありがとうございました。以下、簡単ですが、当日の報告のまとめを試みます。

マルクスは、このテキストで、古典派経済学の理論を駆使して、労働組合による賃上げ闘争やストライキを有害だと断じるウェストン氏の主張にひとつひとつ論駁しながら、労働組合の存在意義を説いています。マルクスの筆致は、ある道徳を振りかざして高みから断じる類のものではなく、あくまで論理的で合理的な帰結がどうなるのかを確かめながら展開されていることが確認できたかと思います。まさに資本主義社会の経済的運動法則を明らかにするという姿勢が貫かれています。

テキストは岩波文庫版で120ページほどの分量でしたが、とても難解でしたね。報告者は、この小冊子を完全に理解するためには、浩瀚な『資本論』の第三巻を繙く必要があるが、その第三巻を理解するには第一巻をも読む必要があると説明していました。「学問の急峻な細道をはい上がる労をいとわない者だけが、光り輝く頂上に達するチャンスを手にするのです。」(『資本論』フランス語版序文より)というマルクスの有名な言葉をあらためて噛み締める次第です。

皆さん、「労働」と「労働力」との違いや、賃上げによっても物価上昇は必ずしも起きない理由など、わかりましたでしょうか。恥ずかしながら、わたしは他人に明解に説明するだけの自信がまだありません。報告者は、第六章〔価値と労働〕から第七章〔労働力〕、第八章〔剰余価値の生産〕、第九章〔労働の価値〕などがとくに重要な箇所だと指摘していました。

ところで、マルクスは、「労働者の労働力の価値または価格は、必然的に、彼にとっては、彼の労働そのものの価格または価値のように見える」と語っているように、資本主義社会の外観を剥ぎ取って、その本質を明らかにしようと試みています。つまり、経済学の意義は、私たちの日常生活のおいて当然と思われる「常識」を覆し、その事象の本質を明らかにすることに存するという、マルクス(あるいは報告者)の定義にわたしは同感です。

なお、今回の学習会の開催にあたっては、野田民主党政権における最大の政治課題となっている「消費税増税問題」を扱いたいという意見も出されていました。しかし、「消費税の問題を検討するに際して、マルクスの『賃銀・価格および利潤』が参考になるのではないか」という意見が出て、まずこのテキストを取り扱うことにしました。そのため、当日は、消費税などの税制との関係が議論となりました。

マルクス経済学を専攻している報告者は、税をどこに課税するのかを考えるためには、商品の価値がどこから生み出されているのかを考える必要があることを強調します。つまり、商品の価値が、労働者階級が受け取る労賃に存するのか、資本家階級が搾取する剰余価値に存するのか、という議論となります。そして、アダム・スミスなどから引き継がれている、価値は労働力によって生み出されるという労働価値説の立場に立つならば、労賃に多分に課せられる逆進性の強い消費税よりも、剰余価値に課すことができる法人税のほうが望ましい、と。マルクス経済学の視点から税制のあるべき姿を考えることもユニークであり興味深いです。ただし、これには異論もあるでしょう。皆さんはいかがお考えですか。

さて、6月のお題は「国内問題」ですが、そのお題に沿ったかたちで、前述のとおり「消費税増税について検証する」というテーマで学習会を行います。消費税増税問題については、4月の新歓学習会でも扱いましたが、今回はさらに、消費税の具体的なしくみや、国会で審議中の法案の内容、法案をめぐる国会の動向、なども報告者から報告した上で、皆で議論する予定です。以下が詳細です。そのため、参加者はあらかじめ指定された文献を事前に読んでくる必要はありません。ただ、各人の問題意識から様々な文献を読んできて参加するならば、当学習会で得られる成果は等比級数的に増えることでしょう(笑)。奮っての参加をお願いします。

【文責 飯島】

 

〇テーマ「消費税増税について検証する」

日時:6月20日()18:30〜
場所:キャンパスプラザB312
(現社研の部室 キャンパスプラザB棟3階)

〇参加費:無料

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